ジオン注射（ALTA療法）とは
ジオン注射とは、いぼ痔のうち、内痔核に有効となる治療です。内痔核を切開せず、薬剤の注射のみで改善が可能です。痛みもほとんどなく、日帰りで受けられます。
ただ、この治療では注射する位置・深さ・角度を正確に判断し、なおかつ薬剤も適量でなければ、良い結果は得られません。「四段階注射法」という特殊な注射方法を修得した医師のみが、実施できる治療です。
施術は、全国的に数の少ない日本大腸肛門病学会の肛門領域専門医（Ⅱb）、および日本臨床肛門病学会の技術認定医をそれぞれ両方所持し、長年の肛門疾患診療経験を豊富に持つ院長が行いますので、ご安心ください。
痔核（いぼ痔）に対する注射療法
いぼ痔は、歯状線の外側の皮膚にできる「外痔核」と、歯状線の内側にできる「内痔核」に分けられます。
ジオン注射は、このうちの内痔核に対する治療です。
内痔核は、排便時のいきみ、習慣的・長時間の座位、身体の冷えなどを原因として発症します。悪化すると、排便時に肛門から飛び出すようになります。飛び出るようになってすぐは、指で押せば戻りますが、やがて押しても戻らなくなり、最後には常に脱出した状態となります。
ジオン注射の仕組みと効果
ジオン注射では、四段階注射法という方法で、1つの痔核に対して4回、段階的に薬剤を注射します。具体的には、痔核の上の粘膜下層、痔核の中央の粘膜下層、痔核の中央の粘膜固有層、痔核の下の粘膜下層という順番で注射を行います。
これにより、翌日には出血の減少が期待できます。その後、1週間～1ヶ月をかけ、徐々に痔核が小さくなり、粘膜が元の状態に戻ります。
なお、痔核が複数ある場合も、並行して同時に治療を行うことができます。
薬剤
ジオン注射では、「硫酸アルミニウムカリウム水和物」「タンニン酸」という2種類を組み合わせた薬剤（ALTA）を使用します。
硫酸アルミニウムカリウム水和物
痔核の血管を収縮させ、血流を遮断する効果があります。これにより、痔核脱出の改善、出血の抑制が期待できます。加えて、組織を硬化する働きを持つため、再発防止にも役立ちます。
タンニン酸
硫酸アルミニウムカリウム水和物の働きを安定化させる作用があります。加えて、注射後の炎症を抑える効果も期待できます。
ジオン注射の主な特徴
ジオン注射の特徴をご紹介します。
痛みの少ない治療で安心
内痔核には、知覚神経が通っていません。そのため、ジオン注射の際にも痛みは感じません。
痔核に対して4段階で
注射する「四段階注射法」
1つの痔核に対して、適切な位置・深さ・角度で、4カ所に注射をします。各部位でしっかりと薬剤を効かせるための、特殊な注射法です。
複数の内痔核も一度に
治療可能
痔核が2つ以上ある場合も、同時に治療を行うことができます。
入院不要の
「日帰り注射療法」
入院は必要なく、日帰りで受けられる治療です。ただし、治療後は30分ほど院内でお休みいただきます。
治療の流れ
基本的な治療の流れをご紹介します。患者さんのご負担を少しでも軽減できるよう、スムーズな進行を心がけております。
Step.1診察
医師が診察を行い、ジオン注射の適応となるかどうかを判断します。適応となるようでしたら、ジオン注射の内容について詳しくご説明します。
痔の種類・状態によっては、他の治療法をご案内することもあります。
Step.2治療日の決定とご準備
治療内容にご理解・ご同意いただけましたら、治療日を決定します。
また治療前後の注意点などについても、詳しくご説明いたします。
ジオン注射治療前の注意事項
ジオン注射を受ける患者さんには改めてご説明いたしますが、以下のような点にご注意ください。
ご来院前に排便をお済ませください
治療後すぐに排便をすると、薬剤の定着が妨げられることがあります。できる限り、ご自宅で排便を済ませて、ご来院ください。
公共交通機関をご利用ください
治療後、一時的にふらつきが生じることがあります。お車・バイク・自転車などは避け、公共交通機関をご利用の上、ご来院ください。
締めつけの少ない服装でご来院ください
スムーズに治療を行うため、また下腹部を圧迫しないため、締めつけの少ない服装でお越しください。
服用中の薬をお申し出ください
抗凝固剤など、一部休薬が必要なお薬がございます。服用中のお薬がある方は、おくすり手帳をお持ちいただくか、服用中のお薬をすべてご申告ください。
Step.3治療
四段階注射法にて、薬剤を注射していきます。痛みはほとんどありません。注射も短時間で終わります。
Step.4安静
院内で30分ほどお休みいただいてから、お身体の状態を確認し、ご帰宅となります。
治療後の排便と日常生活での
注意点
排便についての注意点
いぼ痔の再発防止、また切れ痔の予防のため、以下の点にお気をつけください。
- 便を出そうと、強くいきむことは避けましょう。
- 便意を感じた時には、我慢をせずできるだけ早くトイレに行きましょう。
- 便が出そうで出ないという時も、5分がたったら切り上げましょう。
治療後に守っていただきたい生活上の注意点
入浴について
治療当日は、シャワーのみとしてください。入浴は、治療の翌日から再開可能です。
食事について
治療後2～3週間は、香辛料などの刺激物を控え、消化の良い食事を中心としてください。
飲酒について
飲酒の再開は、医師の許可が出てからとしてください。
お仕事の復帰の目安
デスクワークであれば、治療の翌日から再開可能です。重い物を取り扱う肉体労働の復帰の時期は、その内容によって異なりますので、医師にご確認ください。
運転（自転車・バイク・車）について
肛門に負荷のかかりやすいバイク・自転車の運転は、1週間ほどお控えください。お車の運転は数日後には再開できますが、長時間の運転にならないようにしてください。
座り方・姿勢について
デスクワーク中は、1時間に一度は立ち上がり、お尻を圧迫から解放してあげてください。椅子には深く座り、肛門の負荷を軽減します。円座クッションのご利用もおすすめです。
ジオン注射のよくあるご質問
ジオン注射は痛いですか？
注射を打つ内痔核には、感覚神経が通っていませんので、違和感はあれど痛みは基本的に感じません。当院では、経験を積んだ医師が丁寧に治療を行いますので、安心してご相談ください。
保険は適用されますか？
はい、ジオン注射には保険が適用されます。3割負担の方の場合、自己負担額は1万円前後が目安となります。
何日くらいで症状が改善しますか？
概ね、治療翌日から出血の減少が認められます。その後、1週間～1ヶ月ほどかけて、痔核が縮小し、脱出が改善します。
再発の可能性はありますか？
ジオン注射には、再発防止の効果も期待できます。ただし、再発の可能性はゼロではありません。排便習慣や生活習慣を見直すことで、再発を防ぎましょう。便意を感じた時には我慢せずすぐにトイレに行くこと、いきまないことなどが大切です。
治療後の通院は必要ですか？
治療後、経過を観察するため、1～2回の通院をお願いすることがあります。通常、以降の通院は不要です。