- 切れ痔(裂肛)ってどんな病気?
うんちができない!? - 切れ痔(裂肛)の症状(初期~慢性期)
- 切れ痔(裂肛)の原因
- 切れ痔(裂肛)の検査・診断
- 切れ痔(裂肛)の治療・手術
- 切れ痔が治るまでの期間の目安
- 切れ痔でも痛みを抑える排便方法
- 切れ痔(裂肛)のよくある質問
切れ痔(裂肛)って
どんな病気?
うんちができない!?
切れ痔(裂肛)とは、硬い便が肛門を通ることで、肛門の皮膚が切れてしまう、女性に多い疾患です。背景に、慢性的な便秘を抱えていることが多くなります。
主な症状は、痛みと少量の出血です。軽度の切れ痔であれば、便通の改善、軟膏の使用により治すことができます。
ただ、切れ痔が慢性化すると傷が潰瘍化したり、皮垂(みはりいぼ)・肛門ポリープができたり、肛門が狭くなったりといった問題が生じ、こうなると手術を検討することになります。当院では切れ痔の日帰り手術を行っていますが、重症例では入院手術が必要になります。
また、出血の原因が大腸がんなどの大腸疾患である可能性を排除できない場合には、大腸カメラ検査をおすすめします。
切れ痔(裂肛)の症状
(初期~慢性期)
初期症状
肛門からの出血
傷口から、少量の出血があります。トイレットペーパーや下着に付着して、気づくことが多くなります。通常、分かりやすい真っ赤な血液として認められます。
排便時の痛み
排便時には傷口が広がるため、鋭い痛みを感じます。
慢性期の症状
排便時~排便後にかけての痛み
排便時だけでなく、排便後も数時間にわたって痛みが続くようになります。
傷口の瘢痕化
繰り返しの切れ痔により、傷口が瘢痕化し、肛門が狭くなります。すると、便がスムーズに通過しにくくなります。
痔ろう・肛門ポリープの
合併
切れ痔を放置していると、痔ろうや肛門ポリープなど、他の肛門疾患を合併するリスクが高くなります。
切れ痔(裂肛)の原因
便秘
便秘に伴う硬い便は、切れ痔の原因としてもっともよく見られます。
習慣的・長時間の座位
仕事や運転などに伴い、長時間にわたって座る習慣は、肛門の圧迫や血流の低下を招き、切れ痔の原因の1つとなります。
強くいきむ習慣
排便時のいきみは、肛門に過剰な力が加わり、切れ痔を引き起こします。
冷え・運動不足
どちらも、肛門の血流の低下を招くことから、切れ痔のリスク因子の1つとなります。
食生活の乱れ
便通の善し悪しは、食事に大きく左右されます。特に水分・食物繊維が不足すると、便秘や硬い便の原因となり、切れ痔の発症リスクが高まります。
切れ痔(裂肛)の検査・診断
切れ痔が疑われる場合には、以下のような検査を行います。プライバシー、お気持ちには十分に配慮いたします。
視診・触診
患部を拝見したり、手袋をした手で触るなどして、肛門の状態、切れ痔や他の疾患の有無を調べます。
直腸診
手袋をした指で、医師が直腸内を触診します。切れ痔以外の病気の発見にも役立ちます。ゼリーを使用しますので、ほとんど痛みはありません。
肛門鏡検査
肛門鏡という筒状の器具を用いて、直腸の粘膜を観察します。切れ痔の進行の程度を把握したり、ポリープや潰瘍を発見したりするのに役立ちます。
切れ痔(裂肛)の治療・手術
軽度の場合:保存的治療
薬物療法
抗炎症作用、鎮痛作用のある軟膏、座薬などを使用します。
生活習慣・排便習慣の改善
便秘・下痢、習慣的かつ長時間の座位、冷え、運動不足、食生活の乱れなどがあれば、その改善のための指導・治療を行います。排便習慣においては、便意を感じた時に我慢せずすぐトイレに行くこと、毎日決まった時間(朝食後など)にトイレに行くことなどが大切です。
重度の場合:手術
重度の切れ痔では、主に以下のような治療を行います。これらの治療が選択された場合も、切れ痔の再発予防のため、生活習慣・排便習慣の改善が必要です。
肛門拡張・形成術
瘢痕化した肛門を広げ、切れ痔を起こりにくくします。
切除手術
慢性化した切れ痔、肛門ポリープなどに対して、切除手術を行うことがあります。
切れ痔が治るまでの期間の目安
軽度の切れ痔であれば、薬物療法、生活習慣・排便習慣の改善により、1~2週間で治ります。
重度の切れ痔の場合は、治癒までに2~4週間かかるとお考えください。
また切れ痔が治ってからも、再発予防のため、指導された生活習慣・排便習慣はできるだけ継続しましょう。
切れ痔でも痛みを抑える
排便方法
切れ痔の時、排便時の痛みを抑えるため、また早く治すため、以下のような点にお気をつけください。
- 便意を感じた時には、我慢せずにすぐにトイレに行く
- 便座に座って3分が過ぎても排便の気配がない場合は、切り上げる
- 排便時には、できるだけいきまない
- 肛門のまわりの清潔を維持する
便意の我慢を繰り返すと、排便を促すセンサーが鈍くなり、便秘の原因となります(直腸性便秘)。
また便座に長い時間座っていると、どうしてもいきみたくなりますし、肛門に負荷がかかる・冷える原因となるため、3分程度で切り上げてください。
いきみの原因のほとんどは、便秘です。便秘を改善するための生活習慣の指導、場合によっては薬物療法を受けましょう。
切れ痔(裂肛)のよくある質問
切れ痔が自然に治ったような気がするのですが、そんなことはあるのでしょうか?
ごく軽い切れ痔であれば、普通の傷が治るように、自然治癒することがあります。たまたま硬い便が出て切れ痔になった場合であればそれほど問題はありませんが、切れ痔は原因を取り除かない限り、再発しやすい病気です。発症時には、自然治癒が期待できそうでも、肛門科などを受診し、原因に応じた治療を受けることをおすすめします。
切れ痔を放置していると、どうなりますか?
傷口が瘢痕化し、肛門が狭くなります。排便がスムーズにいかず、便秘になり、さらに切れ痔が起こりやすくなる・重症化しやすくなるおそれがあります。
切れ痔を予防する方法はありますか?
便秘・下痢にならないこと、長時間の座位・いきむ習慣を改めること、冷え・運動不足を解消すること、水・食物繊維を多めに摂ることなどが有効です。
切れ痔といぼ痔の違いを教えてください。
切れ痔は、肛門の皮膚が切れる病気です。対するいぼ痔は、肛門の外側の皮膚や内側の粘膜にいぼができる病気です。共通する原因も少なくありませんが、治療法は異なります。
切れ痔になった時、避けるべき食品はありますか?
香辛料が多量に含まれる刺激物、アルコール、カフェインはできるだけ避けてください。切れ痔が悪化する可能性があります。反対に、水・食物繊維は、積極的に摂りましょう。便秘・下痢を改善するためには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく摂ることが大切です。
切れ痔の治療法には、どのようなものがありますか?
軽度であれば、便通を改善したり、軟膏を塗ることで治せます。
ただ、上記の治療を行っても改善しない、皮垂・肛門ポリープができた、肛門が狭くなったというケースでは、手術を検討します。
「便通の改善」のためには、具体的にどうすればいいのでしょうか?
便秘を改善し、硬い便を正常に戻すことが大切になります。便をやわらかくするお薬を処方しますが、根本的な解決のためには、食習慣の見直しも必要です。
水分、穀物・野菜に多く含まれる食物繊維をこれまでより多めに摂取しましょう。また、適度な運動も有効です。
軟膏を塗っていますが、切れ痔がなかなか治りません。どのタイミングで手術を検討すべきでしょうか?
あくまで目安ですが、軟膏などを用いた薬物療法を3~6ヶ月継続しても良くならない場合には、手術を検討します。それ以上薬物療法を行っても、劇的な効果は期待できないためです。
あまり切れ痔を長引かせると、肛門が狭くなって便が余計に出にくくなったり、細菌感染を起こして痔ろうを合併したりといったリスクが大きくなります。
切れ痔の手術の内容を教えてください。
まず、裂肛部、および皮垂・肛門ポリープを切除します。加えて、肛門括約筋の緊張を取り除くため、内括約筋の一部を切開します(側方内括約筋切開術)。切開する内括約筋はごく一部ですので、手術後に肛門が緩くなるということはありません。手術の所要時間は約5分で、日帰りで受けられます。
一方、肛門の狭窄を伴う重症例では、肛門を広げる肛門拡張・形成術が必要になります。こちらは入院が必要になることもあります。
手術後、切れ痔が再発することはありますか?
極端に肛門が狭くなっている重症例を除き、再発の心配はほとんどありません。
ただ、便秘をそのままにしていると、手術した傷がそのまま治らずに大きな切れ痔に置き換わってしまったり、再度違うところが切れてしまうという可能性もあります。食習慣・運動習慣の改善によって、切れ痔の根本的な原因である便秘を治すこと・便秘にならないことが大切です。
切れ痔の手術後、肛門が緩くなることはありますか?
側方内括約筋切開術で切開する内括約筋は、ごく一部です。またその際、広げ過ぎないように十分に注意して切開いたしますので、肛門が緩くなる心配は基本的にありません。あくまで正常な締まり具合に戻す手術であるため、ご安心ください。
その他、何か気になることがございましたら、遠慮なく医師にお尋ねください。
日帰り手術ができないのは、どのようなケースですか?
傷が瘢痕化し肛門が狭くなっているような重症例については、さまざまなリスクを勘案し、入院手術をおすすめしております。
またその他、75歳以上の方、遠方にお住まいの方、重度の基礎疾患がある方も、日帰り手術ではなく入院手術をおすすめすることがあります。
