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あな痔(痔ろう)

あな痔(痔ろう)って
どんな病気?

あな痔(痔ろう)ってどんな病気?あな痔とは、直腸の粘膜と、肛門の近くの皮膚をつなぐトンネルが形成されてしまい、そこから膿が排出されたり、痛みを感じたりといった症状が見られる病気です。
あな痔は、肛門周囲膿瘍が進行して発症します。また、あな痔を長期にわたって放置していると、稀ではありますが、痔ろうがんが発生します。

肛門周囲膿瘍について

肛門周囲膿瘍について歯状線の内側の肛門陰窩というくぼみで、細菌による感染・炎症が起こり、膿が溜まる病気です。肛門周囲の急激な腫れと痛みを伴います。
治療では、まず切開して膿を出す処置を行います。その後1~2ヶ月に炎症が落ち着いてから、原因を根本的に取り除くため、痔ろうの手術を行います。

あな痔(痔ろう)の症状
(初期~進行期までチェック)

痔ろうでは、肛門の近くにできた穴から膿が出続けたり、腫れと痛みが続くことが特徴です。
膿を排出した後、炎症が一時的に落ち着いたように感じることもありますが、根本的な治癒には手術が必要です。炎症が鎮まる1〜2か月後に、瘻管をしっかり取り除く手術を行うことで再発防止を 図ります。
あな痔の症状には、以下のようなものがあります。
1つでも該当する場合、放置せずお早目に当院にご相談ください。

あな痔(痔ろう)の症状(初期~進行期までチェック)
  • 肛門のまわりの腫れ、違和感、痛み
  • トンネルからの膿の排出
  • 発熱、倦怠感
  • 排便時の痛み

初期・進行期に分けて、詳しくご説明します。

初期症状

肛門のまわりの腫れ・違和感

肛門周囲の腫れやしこり、押した時の痛み・違和感などが見られます。

発熱・倦怠感

肛門陰窩での細菌による感染・炎症により、発熱や倦怠感の症状が見られることがあります。

排便時の肛門の痛み

肛門陰窩の炎症が悪化すると、排便の際に痛みを感じるようになります。

進行期の症状

肛門のまわりの痛み

肛門まわりの痛みが慢性化します。座った時、歩いた時に強く感じます。

トンネルの形成・膿の排出

直腸粘膜とお尻の皮膚がつながってしまい、中から膿が出ます。下着が汚れ、精神的なショックを受ける方もいます。

トンネルの枝分かれ・膿の増加

トンネルが枝分かれし、開口部が複数発生します。それぞれから膿が出るようになります。

あな痔(痔ろう)は
男性に多い?
発症しやすい年齢や特徴

あな痔は、糖尿病などの基礎疾患によって免疫力が低下している方、便秘・下痢が続いている方などによく見られる病気です。

発症しやすい性別

はっきりとした理由は分かっていませんが、肛門周囲膿瘍と同様、男性に多い病気です。

発症しやすい年齢

男女とも、30~40代での発症が目立ちます。ただ、割合は少ないものの、10代や50代以上でも発症します。

あな痔(痔ろう)の原因

人間の肛門には、肛門陰窩という小さなポケットのような構造があり、ここに細菌が侵入すると感染が起こります。特に下痢の際には便が肛門陰窩に入り込みやすく、感染リスクが高まります。
この細菌感染が進行すると肛門周囲膿瘍(肛門の周囲に膿がたまった状態)を発症します。膿瘍を放置すると、膿が皮膚の外に排出される通り道(トンネル)が形成され、これを痔ろう(あな痔)といいます。
細菌感染を起こす要因には、以下のようなものがあります。

免疫力の低下

病気などによって免疫力が低下していると、細菌感染が起こりやすくなります。

便秘・下痢

慢性的な便秘は、肛門に負担をかけ、炎症を引き起こします。また下痢は、通常であれば便が入り込むことのない肛門陰窩に入りやすく、感染・炎症の原因となります。

肛門鏡検査

肛門鏡という筒状の器具を用いて、直腸の粘膜を観察します。切れ痔の進行の程度を把握したり、ポリープや潰瘍を発見したりするのに役立ちます。

その他

不規則な生活、お尻の衛生管理の不足なども、あな痔の発症リスクを高めます。
また、クローン病を原因としてあな痔を発症することもあります。

あな痔(痔ろう)の検査・診断

あな痔が疑われる場合には、以下のような検査を行い、診断します。

視診・触診

医師が患部を拝見したり、手袋をした手で触って調べます。開口部、腫れ・しこり、膿の排出、圧痛などの有無が分かります。

肛門鏡検査

肛門鏡という筒状の器具を用いて、肛門の中を観察します。炎症の程度や位置の確認、トンネルの位置の推定などを行います。

大腸カメラ検査

大腸の病気が疑われる場合など、必要に応じて大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)を行います。

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あな痔(痔ろう)の治療・手術

あな痔の治療は、原則手術が必要です。

瘻管切開開放術

肛門括約筋に切開を加え、トンネルを開き、その傷が治る過程でトンネルを消失させるという手術です。治癒までの期間は、2~4ヶ月程度です。再発の少ない治療法です(再発率1% 以下)。
主に、浅い痔ろうが適応となります。深い痔ろうの場合、肛門括約筋の切開によって肛門の形が変わってしまったり、便・ガスが漏れやすくなってしまったりする可能性が高くなります。
長所:再発率がもっとも低く(1%以下)、根治性が高いのが特徴です。
短所:浅い痔ろうが適応であり、深い痔ろうに適用すると肛門の変形や便・ガス漏れが起こるリスクがあります。
治癒期間:2〜4ヶ月程度です。

シートン法

トンネル、肛門に1本の医療用のゴムまたは紐を通し、輪にして縛ることで、トンネルを肛門へと徐々に移動させ、最終的な消失(肛門にトンネルが吸収されるような形)を目指す治療です。輪は1~2週間間隔で縛り直しますが、その際には多少、痛みがあります。
切開を必要としませんが、治療期間が2ヶ月程度必要です。再発率は、2%程度 です。
長所:上手に行えば肛門の変形や便漏れがほとんどなく、再発率も比較的低い(約2%)です。
短所:治療に2ヶ月程度かかり、1〜2週間おきに輪を締め直す際に多少の痛みがあります。

くり抜き法(括約筋温存術)

トンネルをくりぬき、傷口を縫合するという手術です。肛門括約筋へのダメージを最小限に抑えられ、瘻管切開開放術に見られる合併症を回避することが可能です。肛門の変形・便漏れがまず起こらない点は、大きなメリットです。ただし、やや再発率が高くなります(10~15%)。
主に、深いあな痔が適応となります。シートン法と組み合わせるのが一般的です。
長所:肛門の変形や便漏れがほとんど起こらず、括約筋を温存できる点が魅力です。
短所:再発率はやや高く、10〜15%程度です。
適応:主に深い痔ろうに適応され、シートン法と組み合わせて行うことも多いです。

あな痔(痔瘻)のよくある質問

痔ろうを放置するとがんになるというのは、本当ですか?

痔ろうと放置していると、稀ではありますが、がんが発生することがあります。痔ろうががん化する、あるいは慢性炎症の中で組織ががん化することで、痔ろうがんとなります。またがん化しない場合も、トンネルが枝分かれし、症状が悪化するおそれがあります。放置せず、お早目にご相談ください。

手術の痛みが心配です。

麻酔を使用するため、手術中は痛みをほとんど感じません。また痛み止めも処方いたしますので、術後の痛みについてもそれほど心配される必要はございません。手術前に詳しくご説明しますので、ご安心ください。

あな痔が再発することはありますか?

はい、手術後に再発することがあります。再発を防ぐためには、便秘・下痢、免疫力の低下といった、あな痔や肛門周囲膿瘍のリスク因子を排除することが大切です。また、治療法によっても、再発リスクには差があります。

あな痔にならないために、大切なことはありますか?

便秘や下痢を防ぐための食生活の改善・適度な運動が大切です。また、糖尿病などの基礎疾患があると、細菌感染を起こしやすくなります。生活習慣病にならないための生活習慣を身につけること、生活習慣病になった場合もきちんと治療を受けることは、あな痔を含めたさまざまな病気を予防することにつながります。

肛門周囲膿瘍と診断され、切開して膿を出してもらいました。

なぜ、その上で痔ろうの手術が必要になるのでしょうか?
排膿すれば症状は軽快しますが、肛門陰窩側の細菌の入口が残っているため、放置していると再度膿瘍が形成されてしまいます。また、場合によっては初回より深く複雑な膿瘍になることがあります。
そのため当院では、排膿処置の1~2ヶ月後、炎症が落ち着いてから、根本的な原因を取り除くため痔ろうの手術を行います。
再発を予防するための大切な手術です。ご不明の点がございましたら、ご遠慮なく医師にお尋ねください。

痔ろうは、自然治癒しますか? しばらく様子を見て構いませんか?

痔ろうが自然治癒することはまずありません。放置していると症状が悪化したり、トンネルが複雑化したりして、より治療が難しくなります。また、長期にわたって痔ろうを放置していると、がん化のリスクも生じます(痔ろうがん)。
そのため、放置は絶対におすすめしません。お早目に当院にご相談ください。

痔ろうと診断されました。大腸カメラ検査は必要でしょうか?

痔ろうの原因の1つに、クローン病があります。特に若い人が痔ろうになった場合には、クローン病が背景に存在する可能性が高くなります。そしてクローン病がある場合、通常の痔ろうの手術を行うと、傷がなかなか治らず、より事態が深刻になってしまうことがあります。
そのため、クローン病の可能性を排除できない場合には、当院では大腸カメラ検査を受けることをおすすめしております。

痔瘻には、どんなタイプがありますか?

1型:
ごく浅い痔ろうです。
日帰り手術が可能です。

2型:
トンネルが内肛門括約筋と外肛門活躍筋のあいだを走行する、もっとも多いタイプです(低位筋間痔ろう)。全体の7~8割を占めます。
浅いものであれば日帰り手術が可能ですが、深い場合には入院手術が必要です。

3型:
全体の1~2割を占める、深い痔ろうです。
入院手術が必要です。入院期間の目安は、7~10日です。

4型:
全体の2~3%に該当する、もっとも深く、複雑な痔ろうです。
重症例では、長期間の絶食、人工肛門の設置が必要になることもあります。

痔ろうの日帰り手術には対応されていますか?

1型や2型の痔ろうであれば、当院での日帰り手術が可能です。
一方で3型や4型の場合、手術後の痛み・出血の管理、排便コントロールが特に重要になることなどから、入院手術をおすすめします。速やかに対応可能な病院をご紹介いたしますので、ご安心ください。

痔ろうの手術後、再発する可能性はありますか?

肛門機能を温存しながら、再発しない手術について長年研鑽を積んで参りました。
ただし、現在もなお100%再発しないとは言い切れません。特に深く複雑な痔ろうでは、やや再発率が高くなります(約4%)。
万が一再発した場合も、最善の対処・治療を行いますので、ご安心ください。

痔ろうの手術後、肛門の変形、便漏れなどの心配はありませんか?

経験の浅い医師が担当したり、痔ろうを含めた組織を大きく取ってしまった場合、肛門の変形・便漏れなどが起こることがあります。
痔ろうを取ることはもちろん大切ですが、肛門機能を温存する(必要最小限の除去に留める)ことも同等に大切です。当院の医師は、このことを正しく理解し、機能の温存と完治の両方を目指した手術を行います。そのため、当院の痔ろう手術では、術後の肛門の変形や便漏れの心配はほとんどありません。
痔ろうを含め、肛門の手術の経験豊富な院長が手術を担当いたしますので、どうぞご安心ください。