慢性肝炎とはどんな病気?
慢性肝炎とは、肝臓で慢性的な炎症が起こる病気です。肝炎が6ヶ月以上続いた場合に診断されます。
原因の大部分を、B型肝炎、C型肝炎が占めます。国内の慢性肝炎のうち、約1~2割がB型肝炎によって、約7~8割がC型肝炎によって発症していると言われています。
慢性肝炎を放置していると、肝硬変、肝がんへと移行していきます。慢性肝炎は、早期発見・早期治療がとても重要な病気と言えます。
慢性肝炎の初期症状は
自覚しにくい!?
慢性肝炎の症状としては、以下のようなものが挙げられます。ただ、いずれも緩やかに現れ、かつ非常に身近な症状であるため、「なんとなく体調が悪いな」と感じながらも、受診に至らないケースが少なくありません。また、まったく自覚症状がないということもあります。
- 倦怠感
- 疲労感
- 食欲不振
- 微熱
- 上腹部の不快感
はっきりとした自覚症状は肝硬変へと進行してから現れる
多くのケースで、慢性肝炎から肝硬変へと移行して、ようやく以下のようなはっきりとした自覚症状が現れるようになります。
- 皮膚上の小さな蜘蛛のような血管(クモ状血管腫)
- 手のひらの赤み
- 腹水
- 食道静脈瘤に伴う出血
- 黄疸
- 脳機能の低下
慢性肝炎の原因(アルコール・ストレス)の関係や分類
慢性肝炎は、非ウイルス性のものと、ウイルス性のものに分けられます。
| 分類 | 肝炎の種類 | 原因・感染経路 |
|---|---|---|
| 非ウイルス性肝炎 | アルコール性肝炎 | 大量飲酒、飲酒習慣 など |
| 脂肪肝(NAFLD) 非アルコール性脂肪性肝疾患 |
生活習慣の乱れ、肥満、糖尿病、脂質異常症 など | |
| ウイルス性肝炎 | B型肝炎ウイルス | 感染者との性交渉、出産(母子感染)、注射器の使い回し、刺青 など |
| C型肝炎ウイルス | 注射器の使い回し、刺青、カミソリや歯ブラシの共用、性交渉 など |
非ウイルス性肝炎
近年、非ウイルス性肝炎の患者数は増加傾向にあります。
アルコール性肝炎
日常的な多量のアルコールの摂取によって、肝臓で炎症が起こります。飲む量が多い人、毎日飲む人、長期にわたって飲酒の習慣がある人に起こりやすい肝炎です。
脂肪肝(NAFLD)
非アルコール性脂肪性肝疾患
脂肪肝とは、生活習慣の乱れ、肥満、糖尿病、脂質異常症などを原因として、肝臓に中性脂肪が多く蓄積した状態を指します。炎症が起こったものを非アルコール性脂肪性肝疾患と診断します。
ウイスル性肝炎
B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなどによって起こる肝炎です。
B型肝炎ウイルス
感染者との性交渉や出産(母子感染)、注射器の使い回し、刺青などで感染します。急性肝炎を発症後、ウイルスが自然に排除され自然治癒することが多いものの、感染が持続すると肝炎が慢性化します。
B型肝炎ワクチンによって、感染リスクを大幅に削減できます。
C型肝炎ウイルス
注射器の使い回し、刺青、カミソリや歯ブラシの共用、性交渉などで感染します。約7割で感染が続き、慢性化します。
C型肝炎に対するワクチンは、現在のところありません。
慢性肝炎の検査・診断
慢性肝炎が疑われる場合には、以下のような検査を行い、診断します。
問診
症状、生活習慣、既往歴・家族歴、B型肝炎ワクチンの接種の有無などについてお伺いします。
腹部エコー検査
肝臓での中性脂肪の沈着の程度、肝障害の状態などを確認します。
被ばく、痛みのない検査です。妊娠中の方でも安心して受けられます。
血液検査
主に、以下の項目の数値を確認します。
またウイルス性肝炎の疑いがある場合、抗体検査も実施します。
AST、ALT
AST(GOT)は、肝臓・心筋・脳に存在する酵素です。これらの臓器が障害されている場合、血中ASTが増加します。ALT(GPT)は、主に肝臓に存在する酵素です。肝細胞が障害された場合に、血中のALTが増加します。AST、ALTの値が高い場合に、肝炎を含めた肝疾患を疑います。
γ-GTP
γ-GTPは、肝臓・胆管に存在する酵素です。胆汁のうっ滞、肝細胞・胆管細胞の破壊、アルコールの多飲などがある場合に、血中で増加します。
ALP
ALPは、肝臓をはじめとして、腎臓・腸壁・骨などに存在する酵素です。ALPの値が高い場合には、これらの臓器で何らかの異常が起こっていることを疑います。
LDH
LDHは、肝臓・心臓・腎臓・赤血球などで作られる酵素です。肝臓では、肝細胞に多く存在します。肝細胞が破壊されると、LDHの値が高くなります。
総ビリルビン
総ビリルビンは、分解前の間接ビリルビン、分解後の直接ビリルビンを合わせたものを意味します。肝炎や肝硬変、肝がんといった肝機能障害があると、血中のビリルビンの量が多くなります。
慢性肝炎の治療
慢性肝炎は、その種類に応じた適切な治療が必要になります。
B・C型ウイルス肝炎
インターフェロン等、抗ウイルス薬を用いた薬物療法を行います。ウイルスの働きの抑制、排除により、炎症が治まります。
アルコール性肝障害
禁酒を前提に、食べ過ぎ・栄養の偏りを控える食事療法を行います。特に脂質の摂り過ぎには注意します。
自己免疫性肝障害
免疫の働きを抑制するための、副腎皮質ステロイドを用いた薬物療法を行います。
薬物性肝障害
原因となっているお薬を特定し、その服用の中止、代替薬への変更などを行います。
