- 胃腸炎とはどんな病気？急性と
感染性の違い - 感染性胃腸炎の特徴
（症状・潜伏期間） - 胃腸炎で発熱や頭痛が起こることは
ある？ - 胃腸炎の検査・診断
- 胃腸炎の治療法
- 胃腸炎のときの水分補給・食事の
ポイント - 胃腸炎が治ったあとも注意点
胃腸炎とはどんな病気？
急性と感染性の違い
胃腸炎とは、その名の通り、胃や腸の粘膜で炎症が起こる病気です。吐き気や嘔吐、腹痛、下痢などの症状を伴います。
胃腸炎は大きく「急性胃腸炎」と「感染性胃腸炎」に分けられます。
急性胃腸炎について
食べ過ぎ、お酒の飲み過ぎ、脂っこいもの・刺激物の摂り過ぎなどを原因として起こる胃腸炎です。ストレスや冷えが原因になることもあります。
突然、吐き気・嘔吐、腹痛、下痢といった症状が強く現れます。多くの場合、胃腸を休めれば自然に治ります。ただし、症状が重い（水分を摂れない）場合、長引く場合には医療機関での治療が必要です。
感染性胃腸炎について
ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、カンピロバクター、サルモネラ菌、病原性大腸菌といったウイルス・細菌の感染を原因とする胃腸炎です。手指・食品・便などを介して、まわりの人にうつしてしまう可能性があります。
症状としては、吐き気や嘔吐、腹痛、下痢、発熱、倦怠感などが挙げられます。また細菌性の場合、血便が見られることもあります。感染を広げないためにも、早期の受診・治療が必要です。
感染性胃腸炎の特徴
（症状・潜伏期間）
ウイルス性胃腸炎
感染性胃腸炎のうち、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスといったウイルスの感染を原因とするものを、ウイルス性胃腸炎と言います。
それぞれの主な感染源、潜伏期間、流行時期、症状についてご紹介します。
ノロウイルス
主な感染源：牡蠣など二枚貝・感染者の便や吐しゃ物・感染者の触れたものや共用部
潜伏期間：1～2日前後
流行時期：11～3月頃
主な症状
- 吐き気、嘔吐
- 腹痛、下痢
- 発熱
ロタウイルス
主な感染源：感染者の便や吐しゃ物・汚染された水や食品・感染者の触れたものや共用部
潜伏期間：1～4日前後
流行時期：2～5月頃
主な症状
- 吐き気、嘔吐
- 腹痛、下痢、白い水のような便
- 発熱
アデノウイルス
主な感染源：感染者の便や吐しゃ物・感染者の触れたものや共用部
潜伏期間：1～3日前後
流行時期：年間を通して
主な症状
- 下痢、白色から黄色の水のような便
- 吐き気、嘔吐
サポウイルス
主な感染源：牡蠣などの二枚貝・汚染された水・感染者の便や吐しゃ物・感染者の触れたものや共用部
潜伏期間：1～2日前後
流行時期：10～4月頃
主な症状
- 吐き気、嘔吐
- 腹痛、下痢
- 発熱
細菌性胃腸炎
カンピロバクター、サルモネラ菌をはじめとする、細菌の感染によって起こる感染性胃腸炎です。
主な感染源、潜伏期間、流行時期、症状は、以下の通りです。
カンピロバクター
主な感染源：肉の生食や加熱不足（特に鶏肉）・汚染された水・生野菜
潜伏期間：1～7日前後
流行時期：5～6月、9～10月
主な症状
- 腹痛、ひどい下痢
- 発熱、倦怠感
- 頭痛、筋肉痛
サルモネラ菌
主な感染源：卵（加工食品を含む）・鶏肉・ウナギ・すっぽん
潜伏期間：6時間～3日前後
流行時期：7～9月頃
主な症状
- 腹痛、下痢
- 吐き気、嘔吐
- 発熱
O-157（出血性大腸炎）
主な感染源：牛肉（加工食品を含む）・汚染された水・生野菜・漬物
潜伏期間：4～8日前後
流行時期：6～8月頃
主な症状
- 腹痛、下痢
- 血便
腸炎ビブリオ
主な感染源：魚介類（刺身・寿司）・手や調理器具を介した二次感染
潜伏期間：8時間～1日前後
流行時期：5～9月頃
主な症状
- 激しい腹痛、下痢
- 発熱
- 吐き気、嘔吐
黄色ブドウ球菌
主な感染源：寿司・おにぎり・肉類・卵・乳製品・お菓子などさまざまな食品
潜伏期間：30分～6時間前後
流行時期：7～8月頃
主な症状
- 吐き気、嘔吐
- 下痢
胃腸炎で発熱や頭痛が
起こることはある？
胃腸炎の症状としては、吐き気・嘔吐、腹痛、下痢などがよく知られています。また、発熱や頭痛、倦怠感などの症状を伴うこともあります。
どの症状が出るのか、どれくらい強いのかは症例によって異なり、一概には言えません。気になる症状があれば、お早目にご相談ください。
胃腸炎の検査・診断
問診・触診
問診では、症状、最近の食生活、服用中の薬、既往歴、ご家庭・職場での感染性胃腸炎の流行の状況などについてお伺いします。
また必要に応じて、お腹の触診を行います。
血液検査
炎症や感染の有無を調べます。
便検査
便中の細菌の有無を調べたり、ウイルスに対する抗原検査を行ったりします。
胃腸炎の治療法
胃腸炎に対する、主な治療方法をご紹介します。
薬物療法
症状に応じて、整腸剤、吐き気止め、解熱剤などのお薬を処方します。
細菌性胃腸炎の場合には、抗菌薬を使用することがあります。
十分な水分補給
嘔吐・下痢・発熱といった症状は、身体の水分を奪います。白湯、経口補水液などで小まめに水分を摂りましょう。
水分が摂れないような重症例では、入院や点滴が必要です。
感染性胃腸炎で
ウイルスの種類を
特定する必要はある？
感染性胃腸炎の治療において、ウイルスを特定することは必須ではありません。基本的に、どのようなウイルスが原因であっても、治療法は変わらないためです。また、まわりの人がとるべき感染対策も、ほぼ共通しています。
胃腸炎のときの水分補給・
食事のポイント
胃腸炎の時には、適切な水分補給が大切になります。嘔吐・下痢・発熱といった症状で、普段より体内の水分が不足しがちだからです。
脱水を起こさないためにも、適切に水分を摂りましょう。
- 白湯、経口補水液などがおすすめです。
- お子さんの場合など、リンゴジュースも良いでしょう。ただし柑橘系のジュースは避けてけてください。
- コーヒーや緑茶などのカフェイン入り飲料は避けましょう。
- お茶の場合は、カフェインの入っていないほうじ茶がおすすめです。
食事は吐き気が落ち着いてから少しずつ
胃腸炎の時、「栄養をつけよう」と無理に食べてはいけません。胃腸に負担がかかり、症状が悪化してしまうおそれがあるためです。
症状が落ち着いてから、以下のような食事を、少しずつ摂るようにしてください。
- お粥
- うどん
- 野菜スープ、ポタージュ
- バナナ
- ゼリー
- 食パン（×調理パン、菓子パン）
胃腸炎が治ったあとも注意点
感染性胃腸炎の場合、症状が落ち着いてからも、数週間はウイルス・菌が体内に残り、便と一緒に排泄されます。
そのため、お手洗い後・調理前・食事前は、ご自身、そしてご家族もしっかりと手を洗い、感染を防ぎましょう。
また、手を洗った後のタオルの共用も、避けるようにしてください。
学校・職場への復帰目安
「感染性胃腸炎になったら、学校や職場を〇日休まなければならない」といったような、国としての決まりはありません。
学校・職場などによって異なりますので、診断後、一度確認してみましょう。通常は、症状が落ち着けば登校や出社が再開できます。
診断書が必要になった場合も当院で作成いたしますので、ご安心ください。