ピロリ菌とは？
なぜ除菌が必要なのか
ピロリ菌（ヘリコバクター・ピロリ）とは、胃の粘膜に生息する細菌です。幼少期、主に親から子へとうつり、除菌治療をしない限り、感染が続きます。
ピロリ菌が出す毒素は胃の粘膜を傷つけ、その長期の感染は慢性胃炎、胃がん、胃・十二指腸潰瘍の原因になることが分かっています。ピロリ菌検査で陽性であった場合は、これらの病気の治療・再発防止・予防のため、除菌治療が推奨されます。
また、ピロリ菌に感染しただけではほとんど症状がないことから、これまでピロリ菌検査を受けたことがない方、ご家族がピロリ菌検査で感染した方は、無症状であっても一度ピロリ菌検査を受けることをおすすめします。
放置するとどうなる？
ピロリ菌の影響と症状
ピロリ菌に感染したまま放置していると、ピロリ菌が出す毒素によって、胃の粘膜にダメージが蓄積します。
そして、炎症や潰瘍の原因となります。ダメージが蓄積した胃粘膜は塩分の摂り過ぎ・発がん性物質・ストレスなどの影響を受けやすくなるため、胃がんのリスクも上昇すると言われています。
ピロリ菌の長期感染、および慢性胃炎、胃がん、胃・十二指腸潰瘍などの病気によって、以下のような症状が現れます。
消化器系の症状
よく見られるのが、消化器系の症状です。
- 胸やけ
- 胃もたれ
- 胃やみぞおちの痛み
- 腹痛、背中の痛み
- 吐き気、嘔吐
- ゲップ、呑酸
- 飲み込みづらさ
- 膨満感
- 食欲不振
- 体重減少
- 吐血、下血
- 便潜血検査陽性
その他の症状
その他、血小板減少性紫斑病、慢性蕁麻疹、鉄欠乏性貧血などを合併することもあり、その場合には以下のような症状も現れます。
- 点状または斑状の皮膚からの出血、歯茎からの出血、鼻血（血小板減少性紫斑病）
- 突然、皮膚がぷっくりと赤く盛り上がり、かゆみを伴う（慢性蕁麻疹）
- 顔が青白い、頭が重い、めまい、立ちくらみ（鉄欠乏性貧血）
ピロリ菌の感染経路
（大人・子ども）
ピロリ菌は、経口感染します。そしてほとんどのケースで、免疫力・胃酸の働きが未成熟である5歳くらいまでに感染し、以降は除菌治療を行わない限り感染が持続します。つまり、大人が新たに感染するということはないと思われます。ピロリ菌は、「幼少期に感染しその後も感染が持続している人（主に大人）」から「子ども」へと感染しているということになります。
その主な感染経路としては、親からの食べ物の口移し、食器の共用が挙げられます。ピロリ菌の感染経路については未だ完全に解明されていない部分もありますが、これらのご家庭での行為・習慣は、できるだけ避けることが推奨されます。
ピロリ菌の検査
ピロリ菌検査には、胃カメラを使う方法と、胃カメラを使用しない方法があります。
※ピロリ菌検査および除菌治療を保険診療として行うためには、胃カメラを使う方法を選択する必要があります。
胃カメラを使用する
ピロリ菌検査
迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が出すウレアーゼという酵素は、尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解する働きを持ちます。迅速ウレアーゼ試験とは、この働きを利用した検査です。
胃カメラで粘膜組織を採取し、尿素とpH指示薬の入った液体に浸け、アルカリ側に反応した場合に、陽性と判定します。
検査結果がすぐに出るので、除菌治療を早く開始することができます。
鏡検法（きょうけんほう）
胃カメラで採取した粘膜組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を調べる検査です。
培養法（ばいようほう）
胃カメラで採取した粘膜組織を、ピロリ菌が増殖しやすい環境で培養した上で、ピロリ菌の有無を調べる検査です。培養に5～7日以上かかるため、近年はあまり選択されません。
胃カメラを使用しない
ピロリ菌検査
抗ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査
ピロリ菌に感染していると、私たちの身体は抗体を作ります。
抗ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査では、血液や尿中のピロリ菌の抗体の有無を調べ、陽性・陰性を判定します。ただ、除菌治療を行った場合もすぐに抗体がなくなるわけではないため、現在の感染の有無を調べるという意味では、確実な検査にはならないことがあります。
便中ピロリ抗原検査
便を採取し、ピロリ菌の抗原の有無を調べる検査です。
抗ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査とは異なり、現在の感染の有無が分かります。
尿素呼気検査
ピロリ菌が尿素を分解して作られる二酸化炭素は、血液を介して肺に移り、排出されます。尿素呼気試験では、この仕組みを利用します。
尿素を含む検査薬を飲む前、飲んだ後の呼気を採取し、それぞれに含まれる二酸化炭素の量を測定します。二酸化炭素の増え方を見て、陽性・陰性を判定します。
簡便であり、精度の高い検査です。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌の治療では、内服薬を用いた「除菌治療」を行います。
適切な除菌治療により、ほとんどのケースで除菌が成功します。また、一度除菌に成功すれば、再感染の可能性はほぼありません。
一次除菌
胃酸の分泌を抑える薬を1種類、抗生物質2種類を、1日2回（朝・夕）、7日間内服します。
内服終了後、1～2ヶ月後に再検査（尿素呼気試験または便中ピロリ抗原検査）を行い、成功・失敗を判定します。
一次除菌で、約80％の方が除菌に成功します。
二次除菌
一次除菌に失敗した場合、二次除菌を行います。
一次除菌から抗生物質を1種類だけ変更し、1日2回（朝・夕）、7日間内服します。その1～2ヶ月後に再検査を行い、成功・失敗を判定します。
二次除菌までに、約95％の方が除菌に成功します。
三次除菌
（自費診療となります）
二次除菌に失敗した場合、三次除菌を検討します。ここからは、自費診療となります。
二次除菌から抗生物質を1種類だけ変更し、1日2回（朝・夕）、7日間内服します。1～2ヶ月後に再検査を行い、成功・失敗を判定します。
服用時の注意点
便を採取し、ピロリ菌の抗原の有無を調べる検査です。
抗ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査とは異なり、現在の感染の有無が分かります。
- 軟便、下痢、味覚障害などの副作用が出ることがありますが、治療（内服）を継続することで、次第に改善します。副作用が強く内服に心配がある場合には、当院にご連絡ください。
- 自己判断で薬を減らしたり、内服をやめたりしないでください。耐性菌が生まれ、除菌が困難になることがあります。
- 発熱、蕁麻疹などのアレルギー症状が現れた場合には、すぐに当院にご連絡ください。
- 薬が効きにくくなったり、副作用が強く出るおそれがあるため、除菌治療の期間は禁酒となります。
ピロリ菌のよくある質問
ピロリ菌に感染すると、どんな症状が出るのですか？
慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍などを発症した場合には、胃痛、胸やけ、胃もたれ、吐き気・嘔吐、ゲップ、膨満感など、主に消化器関連の症状が現れます。ピロリ菌感染自体というよりも、ピロリ菌感染によって発症した病気の症状が見られるということになります。重症例では、吐血、下血を伴うこともあります。
一次除菌、二次除菌の成功率はどれくらいですか？
1次除菌が約80％、二次除菌が約95％と言われています。正しく内服することで、ほとんどの方が除菌に成功します。
どのような副作用がありますか？ 副作用が出た場合、どうすればいいですか？
軟便、下痢、味覚障害などの副作用が報告されています。通常、治療を継続していくことで、これらの副作用は軽くなっていきます。想定外の種類・強さの症状が現れた場合、発熱や蕁麻疹などのアレルギー症状が出た場合には、すぐに当院にご連絡ください。
除菌治療を受けたのに、再び感染してしまう可能性はありますか？
再感染する割合は、0.3％と言われています。ただ、多くは除菌治療後の判定が偽陰性（本当は陽性だったのに、陰性と判定されること）が原因と考えられます。
除菌治療後、胸やけがするのですが、大丈夫でしょうか？
除菌治療によって胃酸の分泌が戻り、軽い胸やけを感じることがあります。正常な分泌を取り戻したために感じる症状であり、次第に軽快するものと思われます。もし心配なようでしたら、一度ご相談ください。