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過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS)とは
どんな病気?

過敏性腸症候群(IBS)とはどんな病気? 過敏性腸症候群とは、大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)などを行っても器質的疾患が見つからないにもかかわらず、腹痛や下痢、便秘を繰り返す病気です。強い症状が繰り返され、日常生活に支障をきたしているケースも少なくありません。

ストレスや生活習慣が大きく関係しています

過敏性腸症候群の主な原因は、ストレス、食べ過ぎ・飲み過ぎといった食習慣の乱れだと言われています。また、不規則な生活リズム、睡眠不足なども、過敏性腸症候群の発症に影響すると考えられています。
そのため治療では、薬物療法に加えて、ストレスの特定と緩和、生活習慣の改善がとても大切になります。

過敏性腸症候群の主な症状と
タイプ分類

過敏性腸症候群では、その症状の現れ方に応じて、以下のように分類されます。

下痢型・便秘型・混合型・
分類不能型の違い

診断、および治療においても、患者さんがどのタイプに当てはまるかを見極めることが大切です。

下痢型(IBS-D)

腹痛や腹部膨満感に続いて、急な下痢を起こすのが典型的な症状です。排便をすると、腹痛などの症状が速やかに解消するという特徴があります。ただそれは一時的なものであり、1日に何回も、場合によっては数十回も腹痛・下痢の波が訪れます。
特に、朝(出社前・登校前など)や緊張時(プレゼン前・試験前・会議前など)に症状が出るケースが目立ちます。

便秘型(IBS-C)

排便の頻度が週に2回以下であり、硬い便、残便感が認められるのが便秘型です。腹部膨満感、おならの増加といった症状が見られることもあります。排便をしようといきむことを繰り返し、いぼ痔や切れ痔を併発するケースもあります。

混合型(IBS-M)

下痢と便秘が繰り返されるのが混合型です。ただし、下痢・便秘の期間が等しいとは限りません。便通の変化を予測しづらく、下痢型に次いで仕事など日常生活への影響が大きくなります。「交代型」とも呼ばれます。

分類不能型(IBS-U)

下痢型・便秘型・混合型のいずれにも明確に分類できないタイプです。腹痛・腹部膨満感が続く、頻繁にゴロゴロ・キュルキュルとお腹が鳴るといったケースが見られます。症状に合わせた、細やかなケアが必要になります。

過敏性腸症候群の
症状チェックリスト

過敏性腸症候群の症状チェックリスト
  • 腹痛、腹部膨満感に加えて下痢や便秘がある
  • 突然、腹痛と下痢に襲われるが、排便後は一時的にすっきりする
  • 出社前、登校前、会議前、試験前など緊張した時に症状が出る・強くなる
  • 慢性的な腹痛や腹部膨満感があり、週に排便が2回以下しかない
  • 便が硬い、コロコロしている
  • 便が出づらい、残便感がある
  • おならが増えた気がする
  • お腹が頻繁にゴロゴロ、キュルキュル鳴って困っている
  • 症状によって仕事、勉強、家事、人付き合いなどに支障が出ている

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群の原因 過敏性腸症候群の原因については、未だはっきりしたことが解明されていません。
現在のところ、ストレス、食習慣の乱れが発症に影響しているとの見方が有力です。

ストレス

精神的・肉体的ストレスによって自律神経のバランスが崩れると、セロトニンという神経伝達物質の分泌が盛んになります。これにより、腸の働きが盛んになる・けいれんするといったことが起こり、過敏性腸症候群を発症するものと考えられます。
その他、生活リズムの乱れ、睡眠不足も、自律神経のバランスを崩す原因となります。

食習慣の乱れ

食べ過ぎや飲み過ぎ、また食べ物の種類によって腸内細菌叢のバランスが崩れ、悪玉菌が増えることで、過敏性腸症候群の症状が引き起こされるものと考えられます。悪玉菌が増えすぎると、腸で炎症が起こります。

細菌・ウイルスの感染

細菌やウイルスの感染による急性の腸炎をきっかけに、腸が一時的に過敏になるということがあります。そこにストレスや食習慣の乱れが重なったことで、過敏性腸症候群を発症していると思われるケースがあります。

過敏性腸症候群の検査

問診・診察の上、血液検査、便潜血検査、大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)を行い、診断します。
過敏性腸症候群の場合、大腸に器質的疾患は認められませんが、大腸がんなどの他の疾患を除外するため、大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)が必要となります。過敏性腸症候群を疑って大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)を行い、大腸がんが見つかるというケースもあります。

大腸カメラ検査
(大腸内視鏡検査)

大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査) 肛門から内視鏡を挿入し、大腸粘膜を直接観察するという検査です。過敏性腸症候群、大腸がん、クローン病、潰瘍性大腸炎など、さまざまな大腸の病気の発見・診断ができます。
当院では、鎮静剤を用いた、専門医による苦痛の少ない大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)を行っております。

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過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群の治療では、生活習慣の改善がとても重要です。根本的な原因を解決することが、症状の改善、再発の防止に役立ちます。

生活習慣の改善

食べ過ぎ・飲み過ぎを控え、栄養バランスの良い食事を摂ります。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を意識的に、バランスよく摂ることも大切です。下痢がある場合は、常温または温かい水分を小まめに摂取するようにしてください。
その他、楽しみながら継続できる適度な運動は、ストレスを解消し、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。同様の理由で、十分な睡眠、規則正しい生活リズムも大切にしてください。

薬物療法

セロトニンの働きを抑える薬、便の水分を調節する薬、胃腸の働きを改善する薬、下剤などを、過敏性腸症候群のタイプに合わせて処方します。乳酸菌製剤を使用することもあります。

過敏性腸症候群に使える市販薬とは?使い分け方のポイント

一時的な症状の抑制を目的とする場合には、市販薬の使用も有効です。
下痢型であれば整腸成分を含むロペラミド、便秘型であれば酸化マグネシウムを含む緩下剤・乳酸菌整腸薬などがあります。ガスによるお腹の張りに対しては、消泡剤・ガス除去成分の入った薬もあります。
ただしこれらの市販薬は、あくまで一時的な対症療法としてご使用ください。医療機関で治療を受けずにこれらの市販薬を使い続けることは、根本的な治療にはなりません。また、効きが悪くなってきたり、副作用が強く出たり、あるいはそもそも逆効果になるという心配もあります。
根本的な治療のため、市販薬の使用はできる限り短期間に留め、できるだけ早く、当院にご相談ください。

過敏性腸症候群の方に
おすすめの食事と注意点

過敏性腸症候群の治療においては、生活習慣の改善、中でも食習慣の改善が重要となります。
食べ過ぎない・飲み過ぎない・バランスの良い食事を摂ることに加え、以下のような点がポイントとなります。

食物繊維を意識的に摂る

食物繊維を意識的に摂りましょう。
便のかさを増やしてくれる水溶性食物繊維と、便をやわらかくしてくれる不溶性食物繊維をバランス良く摂ることが大切です。
水溶性食物繊維は、昆布やわかめなどの海藻類、里芋、フルーツ、大麦・オーツ麦などに豊富に含まれます。
不溶性食物繊維は、穀類、野菜、豆類、きのこ類、海藻類などに豊富に含まれます。

低FODMAP食を摂る

低FODMAP食を摂る FODMAP(フォドマップ)とは、オリゴ糖、ポリオールの糖類、単糖類、二糖類の総称です。そしてFODMAPを多く含む食品を「高FODMAP食」、少ない食品を「低FODMAP食」と言います。
過敏性腸症候群の方は、FODMAPの摂取量を減らすことで、症状の改善が期待できると言われています。注意が必要なのは、高FODMAP食をすべて避け、低FODMAP食だけを食べるという食事療法ではないという点です。高FODMAP食を完全に取り除くことは現実的ではなく、また人によっては大きなストレスになってしまうためです。
あくまで、できるだけ低FODMAP食を中心に摂りつつ、できるだけ高FODMAP食を避けるという食事療法になります。高FODMAP食は、1つひとつ実際に食べ、症状が引き起こされるようなら次回から避けるという方法で、食べる・食べないを判断していきます。

高FODMAP食

  • パン、パスタ、ラーメン、うどんなどの小麦粉製品
  • アスパラガス、長ネギ、たまねぎ、ニラ、さつまいもなどの野菜
  • ソーセージ
  • 大豆、豆乳、納豆などの豆類
  • りんご、スイカ、桃
  • キシリトール、ソルビトールなどの人工甘味料
  • きのこ類
  • はちみつ、牛乳、ヨーグルト
  • チョコレート、アイスクリーム
  • ウーロン茶

など

低FODMAP食

  • 米、玄米、ビーフン、フォー、十割蕎麦
  • 卵、牛肉、鶏肉、豚肉、魚
  • トマト、ほうれん草、大根、カボチャ、人参、ジャガイモなどの野菜
  • 木綿豆腐
  • バナナ
  • メープルシロップ、バター、マーガリン
  • 緑茶、紅茶

など

消化の悪いもの・胃腸を刺激するものはできるだけ避ける

脂っこいもの、お菓子やケーキなどの甘い物、香辛料が多く入った刺激物、カフェイン入り飲料、アルコールなど、消化の悪いもの・胃腸を刺激するものはできるだけ避けましょう。ただ、高FODMAP食と同様、完全に断つ必要はありません。食べた時の症状の現れ方と相談しながら、ストレスにならないように制限していきます。

乳糖不耐症の方は牛乳・
乳製品を避ける

乳糖を分解する酵素が不足している・働きが弱いことを「乳糖不耐症」と言います。乳糖不耐症の方は、牛乳、乳製品を摂取するとお腹を下してしまったり、ガスが溜まりやすくなるため、できるだけ避けるようにしてください。